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ドラマ『それってパクリじゃないですか?』から特許のコツを学ぶ!?

“知的財産エンタメドラマ『それパク』から特許を取るコツを学ぶ”


今年4月に、”弁理士”が登場するドラマが始まりました!!
その名も『それってパクリじゃないですか?』(通称『それパク』)


毎週水曜22時より、日本テレビ系列にて放送中です!


このドラマ、誰よりも待ちに待っていたのが
僕ら”弁理士”です。


これまでにも、知財系のドラマは放送されたのですが・・・
有名なのが”下町ロケット(TBS系列、阿部寛さん主演)ですね(^^♪


でも・・・、
そこに登場していたのは、
”弁護士”でした(´;ω;`)ウゥゥ


いや、しょうがないです。
”弁護士”の先生の方が知名度ありますし・・・


バックヤードで活躍する弁理士の業務は
ひたすら”書類の作成”という地味な役割・・・


テレビ映えしません(笑)


しかし、このたび、満を持して(僕が言っているだけ)
”弁理士”が登場するこの『それパク』が始まったのです!!


もう感無量ですよ\(^o^)/


って、僕だけが息巻いていてもしょうがないのですが・・・


このドラマ、経営者のみなさまに是非視聴して欲しいんです!


知的財産なんて関係ないと思っている経営者こそ見ていただきたい( ー`дー´)キリッ


って僕の戯れ言はこの辺にして、今日は、その『それパク』から
特許を取るコツを簡単にご紹介させていただきます。


※ご注意※
 一部、ドラマ本編のネタバレを含む内容になっていますので、まだご覧になった方は本編をご視聴いただいてからお読みいただくことをおススメします!


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トピック
1. 特許出願をすることなく自社技術を守る!?
2. 『ヤバい』で特許を取る!?
3. 『官能評価』とは!?
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1.特許出願をすることなく自社技術を守る!?
 新規な発明をし、その発明(自社技術)を容易にマネされないようにするための手段が『特許出願』です。『特許出願』をし、その出願に係る発明に『新規性』や『進歩性』が認められれば、その発明に『特許』が与えられます。

 一方で、『特許出願』をした場合、その出願日から1年6ケ月経過後に、その『特許出願』に係る発明が公開されることになっています。発明が世の中に公開されることで、産業の発展に資するとされているからです。

 法(特許法)は、新しい発明を公開したことの代償として『特許』(独占権)を付与することとしています(工業所有権法逐条解説〔第22版〕特許法第1条(目的)より)。

 しかしながら、首尾よく『特許』を取得できた場合はともかく、『特許』を取得できなかった場合は、自由技術となり、世の中の誰もが自由に使用可能な技術となってしまいます。

 したがって、『特許』を取得できないような技術や、取得し難い技術については、『特許出願』という手段ではなく、『特許出願』をしないという選択肢(経営判断)も取り得ます。それが『ノウハウ(営業秘密)』として発明(自社技術)を守るという手段です。

 『特許出願』をしなければ公開されることはないのですが、『ノウハウ(営業秘密)』として自社技術が、他社を含む世の中に知られないように秘密に管理するのは容易ではありません。しかしながら、秘密管理を徹底することにより、肝いりの自社技術を『ノウハウ(営業秘密)』として守ることができれば、他社はその分野に参入することができず、市場での優位性を高めることができると考えられています。

 現在でも、自社技術を『ノウハウ(営業秘密)』として管理している企業が存在します。有名どころでは、“ケンタッキーフライドチキン®のレシピ”や“コカ・コーラ®のレシピ”がよく知られています。

2.『ヤバい』で特許を取る!?
 さて、『それパク』第6話ではその『ノウハウ(営業秘密)』が話題にあがりました。発明者の一人による学会発表が迫っているが、学会で発表してしまうと『新規性』を喪失してしまい『特許』を取得できなくなる。。「特許性(多くは『進歩性』)」を見いだすには根拠(証拠)が足らない。。

 そのため、『特許出願』をすることなく、『ノウハウ(営業秘密)』として守る選択肢が出てきました。

 第6話で登場した、月夜野ドリンク社が大学との間で共同開発した発明『ジュワっとフルーツ・スパークリング』は、主人公の亜希(芳根京子さん)を始め、月夜野の社員も口をそろえて『(その味が)ヤバい』と連呼しながら賞賛していました。

 しかし、弁理士の北脇(重岡大毅さん)は、『ヤバい』では『特許』を取得することはできないとけんもほろろに突っぱねます。これは確かにその通りで、『ヤバい』とか『すごく美味しい』といった個人の主観による要件では、特許性(多くは『進歩性』)が認められることはないでしょう。

 ちなみに、この『ヤバい(やばい)』という表現、辞書にのっているのでしょうか・・・?
 そこで、我らが弁理士のバイブルの一つでもある“広辞苑”で調べてみました。
 半信半疑でしたが、ありました。

『やば・い』 
①不都合である。危険である。②のめり込みそうである。
(広辞苑第7版より)

 広辞苑の意味によれば、月夜野ドリンクの『ジュワっとフルーツ・スパークリング』について亜希らが表現した『ヤバい』は、②の「のめり込みそうな」くらい(おそらく)美味しいという意味になるかと思いますが、上記の通り、このような個人の主観的な感想では特許を取ることはできません。

 ところが、『ジュワっとフルーツ・スパークリング』の試作品を試飲した北脇は言います。
 『“ヤバい”で『特許』を取るんです!』と・・・。
 一体、北脇弁理士はどのような根拠で、普通なら言わないことを言い放ったのでしょうか?

3.『官能評価』とは!?
 ピンチの中、北脇弁理士は、『官能評価』による『特許』取得の可能性を示唆します。

 『官能評価』とは、人の五感(視覚,聴覚,嗅覚,味覚,触覚)に頼って物の特製や人の感覚そのものを測定する方法をいう(『官能評価とは何か、そのあるべき姿』山口静子より)とあります。

 そして、具体的には大勢の人(パネル)に、一定の条件で、与えられた試料を、見る、嗅ぐ、味わうなどをして設問に言葉や数字(尺度)で答えてもらい、結果を統計的に解析する(『官能評価とは何か、そのあるべき姿』山口静子より)と説明されています。

 食品に関する発明の『特許』においては、この『官能評価』が良く用いられています。そして、この『官能評価』によって対象の発明に係る食品等と例えば従来の食品との統計的有意差を導き出します。

 『それパク』の上記事例で言えば、『ヤバい』の判断基準(従来製品に比べて味が○○だから、どのようにヤバいのか?)を設定し、例えば5段階評価などによって数値化して、発明の優位性を可視化していきます。

 そうして得られた数値において、『ジュワっとフルーツ・スパークリング』が従来の炭酸飲料と比較して、どれほど優れているのかが客観的に示されれば、特許性(とりわけ『進歩性』)が認められる場合があるということになります。

 一方で、近年、この『官能評価』によって特許性を見いだすことに対する風当たりが強くなってきています。なぜなら、評価軸が『美味しい』とかそれこそ『ヤバいほどウマイ』といった曖昧かつ人の感覚によるものであるからこそ、それを可視化するための基準やパネルの統一化などが厳しく求められているからです。

 ドラマの中でも、『ジュワっとフルーツ・スパークリング』の美味しさを判定するパネルを訓練された専門パネラーとし、『官能評価』試験の会場も、温度・湿度が一定に保たれ、余計な音を排除した空間に設定されていたようです。

 このように『官能評価』による『特許』取得の道は決して楽なものではありませんが、食品の発明にチャレンジされたい方は、検討してみてはいかがでしょうか?




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