炭酸美容家 髙橋弘美|コスメ・美容・スキンケアを学ぶ

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手作りアルコール消毒の裏側をコスメを読む視点から解説Vol.7

炭酸美容家髙橋弘美です。

依然として市場での消毒用アルコールスプレーの入手が難しい日々ですね。

さて、ハンドメイドの消毒用ジェルやスプレーについては、Youtube動画にもアップしましたが、ご質問やお問い合わせがありました。

気になるところ、いっぱいありますよね。

確かに、手作りでの消毒用ハンドスプレー等の処方に消毒効果が見られないものが多かったのでもう少し詳しく、このメルマガで書くことにしました。

一般的な手作りコスメについても非常に残念ながらyoutubeなどに掲載されているものはレシピにしても原材料にしても作り方にしても「ちょっとこれ大丈夫かな?」と思うものが結構あったりします。

私のように化粧品や医薬部外品の製造工場を経営し、成分の専門家でない限り、多くの人には「何故ダメなのか」はなかなか理解しづらいだろうなあ、と思いつつ静かに見守っているところです。

そんな中、やっぱり消毒用のハンドジェルやハンドスプレーについてはあまりの手作りレシピの酷さにちょっと気の毒になりまして…今日はしっかりそこをお伝えできればなあと思います。


アルコールとは
・メタノール(メチルアルコール)→化粧品では配合禁止成分
・エタノール(エチルアルコール)
・イソプロパノール(イソプロピルアルコール)
などの総称です。

消毒に使われるのはエタノールとイソプロパノールですが、エタノールは数あるアルコールの中で安全面と効果面で一番よく使われています。


今はまだまだお店には在庫がない様子ですが、ドラッグストアなどで売られているエタノールには以下のようなものがあります。
・無水エタノール→エタノール99.5vol%以上
・エタノール→エタノール95.1~96.9vol%
・消毒用エタノール→エタノール76.9~81.4vol%
・消毒用エタノールIP→エタノール76.9~81.4vol% にイソプロパノールを添加


エタノールが最も除菌効果を発揮するのはアルコール濃度がおよそ70~83vol%であり、新型コロナウィルス等に推奨されている消毒用はこの濃度になるよう調整されています。

以前のメルマガにも記載していますが(リンクは一番最後にあります)日本の場合は、日本薬局方(局方)でエタノール濃度76.9~81.4vol%です。

私も消毒用の炭酸アルコールハンドスプレーを処方しましたが、これがどのようになっているかというと、もちろん、局方基準で製造しています。製造後72時間は隔離し、エタノールの濃度が法定量になっているか確認してその効果を確認しています。


手作りの場合は、作っている過程ですでにエタノール濃度が基準よりも低くなる可能性があります。また作っている環境によって、新たに菌が混入する可能性もあります。

よって、手作りで作る場合もやはり最終的に目指すアルコール濃度は70〜83vol%になるように作るのがおすすめです。

一方、WHO(世界保健機関)による手指のアルコール消毒の定義を見てみると「アルコールが少なくとも60%以上含まれている手の除菌ローションは、石けんと水で手を洗えない場合に消毒するのに許容される方法」とあります。

それもあってか、ネット上のレシピを見ていくと、多くの消毒用ハンドサニタイザーのアルコール濃度が60%ぐらいのものが実は多かったりします。

このようにアルコール濃度についてはバラツキがあるのですが、レシピを選ぶときには、最終的にアルコール濃度が76.9~81.4vol%になるものを選ぶのが賢明です!


例えばこんなものも手作りしてはいけないアルコールハンドスプレーです!
全くアルコールの効果はないものになりますので要注意です。

・有機アルコール14%のウィッチヘーゼル
・アロエベラジェル
・ラベンダーエッセンシャルオイル
・レモンエッセンシャルオイル
・ティーツリーエッセンシャルオイル
・スイートオレンジエッセンシャルオイル
・ビタミンE


アルコールがそもそも14%しか配合しないものをレシピに使用することに異議を唱えたいと思います。
しかも世界的に有名なサイトが出しているので気をつけたいですね。



それからこんな手作りレシピもありました。

無水エタノール40mL
精製水160mL
精油 48滴


これですと、せっかく無水エタノール(99.5vol%以上)を使っているのに精製水で希釈するために、アルコール濃度はたったの19.8vol.%しかなくなってしまいます。

また余談になりますが、手作り化粧品では精油を使う人が多いかと思いますが、「特定の精油がウィルスを除去する」というはっきりと認められたものは今のところないのでただの「香り」として使うことをおすすめします。

なぜなら、仮にウィルスや菌を除去する精油があったとしても配合量やその他の成分との組み合わせ、経時によってその効果が失われる可能性もあるなど精油には不安定材料が多いためです。


またこれもアロマ系のところから引っ張ってきましたが

精製水 15mL
無水エタノール 15mL
キサンタンガム 小さじ1/8
アロマオイル 6滴

これですとアルコール濃度は48vol%ちょっとにしかならないです。これもせっかく無水エタノールを使っているのだから希釈率を間違えているのは惜しいです。残念なレシピと言えます。

また新型コロナ対策としての消毒用ハンドジェルやスプレーで「アルコールフリー」というのは全く効果がありません。むしろ「アルコールフリーで安心」と思ってしまうことはとても危険です。

新型コロナウィルスは、「エンベロープ」という脂質からできた二重の膜を持っていてアルコール(エタノール)にはその脂肪の膜を壊すことができます。それによって感染力を失わせることができるわけです。

よって、手指の消毒で「アルコールフリー」では新型コロナウィルスには効果がないわけですからご注意ください。


このようにハンドメイドでの消毒用アルコールジェルやスプレーの処方はイメージ先行型ものも多く、「アルコールフリーの除菌」などというものもあります。アルコール=肌に良くないというところから来ているのかもしれません。

確かに、アルコールがベースとなっているハンドジェルやスプレーを頻繁に使うと、手指の乾燥の原因になりますね。これは、アルコールが肌の上で蒸発する時に、表皮の水分を奪ってしまうからです。

使用回数などはしっかり把握し、使用するものはグリセリンなどの保湿剤が添加されているものをおすすめします。

話はそれましたが、消毒効果を持つハンドジェルやハンドスプレーを手作りする場合は最終的にアルコール濃度が70〜83vol%になっていることが大事なので必ず確認して手作りするようにしましょう!


今日も最後まで読んでいただきありがとうございます。


【発行者】
炭酸美容家高橋弘美
ビューティーリテラシー
by コスメチックリエゾン



[参照]
手作りは要注意![消毒・殺菌]アルコールハンドスプレー|正しく作って・正しく使って身を守る!化粧品会社社長が伝授
https://youtu.be/JthE8R1XUeQ

Guide to Local Production: WHO-recommended Handrub Formulations
https://www.who.int/gpsc/5may/Guide_to_Local_Production.pdf?ua=1

海外のハンドサニタイザー・手指消毒用アルコールの事情はどうなの?
https://home.tsuku2.jp/mailmagDetail.php?scd=0000101547&mcd=36443


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