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ブラザーズ珈琲物語14
ブラザーズ珈琲物語14
ぶた釜物語3
わが社のぶた釜は半熱風式焙煎機である。少し専門的になるが、コーヒー焙煎機には基本的に3方式がある。
勿論現代では超小型にして店頭で又はカウンターの上で、又はご家庭での焙煎機もある。
しかし、ここでは業務用焙煎機について述べてみたい。
1.初めに直火式焙煎機、これは読んで字の如くガスバーナーの火がコーヒー豆が入って回転するドラムにパンチングによって開けられた穴を通して直接コーヒー生豆にあたる方式である。
コーヒー焙煎を見たことがないか方にはイメージが湧きにくいと思うが、例えていえば、金網の上でサンマを焼く時直接ガスの火がサンマに当たることと同じ理屈である。
2、熱風式焙煎機である。次に直下式と真逆に熱風式がある。これはガスの炎がコーヒー豆に直接当たらないで、ドラムの鉄板を通して間接的熱によって加熱焙煎する方式である。
例えていえば、フライパンの上でピーナッツを煎ることをイメージすれば想像できるかと思う。
3、半熱風式焙煎機である。これは、直下式と熱風式の良いとこ取りの方式である。状況に応じて直下式にも、熱風式でも、両方も出来るのである。
わが社はこれである、ズブの素人の私がこれを選んで買い取ったわけではなかった。
たまたま、このような焙煎機と出会っただけである。
しかし焙煎士の中では、一度はこの半熱風のそれもぶた釜で焙煎してみたいと思わせるらしい。
ここでは、コーヒー焙煎の専門的なことは割愛させていただくことにする.
コーヒー焙煎のことなど考えたこともないし焙煎をしてみたいと思ったことも無かった者が、況してや人生これまで家庭でさえ料理もしたことがない者が、最も難しく、微妙でデリケートなこの方式と出会ったことが、奇跡というか試練というか恵みというか、不思議な世界に入り込んでいくのである。
冒頭で、コーヒー焙煎は、機械工学、電気工学、熱力学、工業化学、調理学、流体力学などの知識が必要だと言ったが、只知識だけでは役に立たないのである。
これらの学問の専門家になるわけではないので細かい学術的理論の意味ではなく、コーヒー焙煎の作業の中にこれらの要素が込められているのである。
且つそれをイメージ出来なければならないのである。
コーヒー焙煎の先輩で神奈川県厚木市にオーロラコスモ珈琲の依田社長と出会ったことがある。
そこで焙煎のイロハから、核心までを迄を相続できたように思っている。一度しか会っていないのに、熱心に、惜しみなく語ってくださったことは忘れられない。
松永さん、コーヒー豆を蒸すということは分かりますか、という質問が来た。はっ。
私はまるで頓珍漢な応答をしたことを今も覚えている。
はい、コーヒーをドリップする時お湯を注ぎ、ふっくらと膨らみハンバーグ状態なるのを少し待ってから、次のお湯を注ぐことですねと応えた。
これで私はど素人ということがばれてしまった。しかし、その方は私をバカにしたり、怒ったりしなかった、さらに熱心に教えてくれたのである。
正に一期一会の境地であった。コーヒー焙煎はガスの火で焼くのではなく、蒸すのである。
全く意味不明、理解不能で別れてしまった。
それから数年経った時、再び今度は電話で質問した時も同じ内容を繰り返し話してくださった。
とすれば、コーヒー焙煎において蒸しは極めて重要なことだと分かった。
又、その時は既にその意味も充分理解し経験もしていたのである。
調理技術において、只煮る、焼く、炒める、だけでは無くこれに蒸しを加えるとさらに旨みが増すのである。
ど素人が何を言うかとという声が来そうである。これは、我が家で家内から聞いたことである。
ある程度料理が出来上がったとき、直ぐに火を止めないで蓋をのせ暫く蒸状態にして置くと更に高温になり美味しくなる。
と言っていたことを思い出した。
正にコーヒー焙煎には蒸が必要であったことが良く理解できた。これは調理だけの問題で
はなく熱力学の内容であった。
沸騰温度は大体100℃であるが蒸気にすると200℃程度になるのである。
このように、多寡が焙煎、されど焙煎である。
ブラザーズ珈琲は多くの人々の思い、知識、経験が込められて出来上がったのである。
私はコーヒー焙煎技術、技能はもうこれで完成したとは思っていない。
もっともっと奥が深いことも分かってきた。しかしコーヒー焙煎技術より更に重要なことがあると感じるようになった。
コーヒー焙煎は人間形成の修行の場である。謂わば焙煎道である。
今日はこの辺で終わります。
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