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メールマガジン バックナンバー
「 袋の中身 」 西連寺です。
「サンタの袋の中身と、布袋の袋の中身のちがいを知ってるか?」
とある老僧に聞かれた事がありました。
私「サンタの袋の中身は知っていますよ。世界中の子供が欲しくてお願いしたプレゼントが入っています。・・・ 布袋(ほてい)さんですか、あのでっぷりとしてニコニコ笑ったお姿の。」
老「そう。どこに行くにもいつも大きな布袋(ぬのぶくろ)を担いでいたんで、ついたあだ名が布袋(ほてい)さん。 ホントの名前じゃなくてあだ名じゃな。もともとは神様じゃなかったのがいつの間にか《七福神》に入れられた。」
私「考えたことも無かったですが、福の神ならやっぱり貰って嬉しい色んなプレゼントが入っていそうですが、サンタとちがいがありますか?」
老「サンタの袋には欲しいと望んだプレゼントの品が入っておる。つまり《幸せ》が入っておる。 貰ったら嬉しい幸せが。 望んだ品じゃからな。」
老「ところが布袋さんの袋には誰かにあげるプレゼントも幸せも入っておらん。 入っておるのは《悲しみ》《悔しさ》や《怒り》が山ほど入っておる。」
私「え!」 「それはまたどういう事です?」
老「布袋さんは毎日村々を歩いて、悲しそうなひとがいるとそのひとの横に座って 『どうされました?何かありましたか。私で良かったらお聞きいたしますよ。』『ああ、布袋さん、誰にも言えない事なんですが、聞いてもらえますか。』 うなずきうなずき『それは悲しいですねえ、辛いですねえ。』と聞く。 さとす事もなく正すこともなくただうなずいて一緒に悲しむ。 そして『また、わたしで良かったらお聞かせください。』と立ち去って行く。 その時に聞いた話を袋に入れて誰にも聞かれぬよう紐でしっかり縛ってヨっコラショと担いで立ち去っていくんじゃ。 その悲しみを背負っていくんじゃな。また出会った時に決してその悲しみを忘れておらん。』
私「・・・・」
老「険しい辛い顔しているひとに出会うとまた 『どうされました。何か我慢出来ないほど腹が立つ事がありましたか?』 『ああ布袋さんか。まあ聞いてくれるか、さっきなあ・・』と、聞いた話を背負って立ち去る。 だから、布袋さんの袋の中身は《悲しみ》や《怒り》で一杯というわけよ。」
望んだモノが貰える・手に入るという事は嬉しく幸せな事でありますが、その幸せは長続きはしにくいです。欲望にキリが無いわたしですから手にしたら次のモノが欲しくなる。満足は不足の第一歩。
本当の幸せ・仕合わせは ≪ 話を聞いてくれるひとがいる事 ≫。 一緒に悲しみ一緒に喜んでくれるひとがいる事こそが何にもましている事に、ひとは中々気づかないものです。
聞いてくれるひとがいて、出来る事なら 誰かにとって《 聞くひと 》になれれば。
《 話すは、放す。聞くは効く 》
《 悲しみは、悲しみを知る悲しみに救われ 涙は、その涙にそそがれる涙に助けられる 》
寒さ厳しき折、くれぐれものご自愛念じ申し上げます。
西連寺 住職 栗山知浩 拝