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メールマガジン バックナンバー
『 飛ばせ!タンポポ 』 西連寺です。
当初はまさかこんなに長引くとは思っておりませんでした。
新型ウイルス拡散によるそれまでとは違った生活形態。
マスク・アルコール除菌、仕事の苦悩。そして、何より「ひとと出会わない様に」と。
さびしい悲しい思いをしているひとの所に会いに行く、ということが憚られる日々。
この出会いの世界、語り合いふれあい手を握り合って築き上げてきた価値観を否定されるのであれば、これから何をどう積み上げていけば・・・。
どんな状況にあっても [代わるもの無し] と歩まなければならないわたしにエールの詩。
《 ロゼット タンポポの詩 》 半崎美子・詩
乾いた町の足元に
塵に埋もれて捨てられた景色
いま一緒に冬を越そう
わたしたちの方法で
花のように手を広げて日を浴びよう
地を這うように生きて行こう
どんな荒地でも根を張れる
あなたなら
くすんだ道の片隅できっと
影に踏まれてなお 美しいまま
いま一緒に風をしのごう
こころを寄せ合いながら
丸くなって手を繋いで
身を守ろう
あしたを分け合い生き延びよう
冷たい夜でも地面はあたたかい
春は私たちを忘れたりしない
いつか黄色い花をつけ真っ白な命で
風を味方に旅をする
立ち上がって今
旅をする時がきた
地を這うように生きて行こう
どんな荒地でも花を咲かせて
春をよぶ
この場所で
「ロゼット」とは放射線状のこと、地面にタンポポが葉を広げているような。
あのギザギザで地面に這う葉には大きな意味があると。
こんなところでも生きているのか・・と思うようなどんな過酷な場所でも太陽の光を精一杯に受け止められる様に、少しでも表面積を増やそうとギザギザに。
風に飛ばさせないように低く低く地面に這いつくばって。
何より凍てつく寒い夜でも、地面のあたたかさを受け止められるようにと。 地面のあたたかさを。
花が散ったタンポポは倒れますが、枯れたのでも尽きたのでもないそうです。
倒れている間は、綿毛を飛ばす準備をしている大事な時間。
その証拠に準備整うとまた、真っすぐに立ち上がります。
なんと!以前より1.5倍の背丈に伸びて。 少しでも遠くに綿毛を飛ばすために。
形にも時間にも全て意味がありました。
見るひとは知らなくても、何を言われてもどう思われても、たとえ目をむけられる事がなくても。
光と熱が必要なのです。
それがあれば立ち上がり、次へ命を羽ばたかせることが出来るのです。
「どこへ落ちても生き抜く力」のすべてを込めて飛ばします。
仏法では、光と熱のことを「智慧と慈悲」と説かれてあります。
その大事さをタンポポに教えられます。
自分自身ももちろん精一杯。 踏ん張っている頑張っている。 間違いなくそれは。
それが出来てある、そうさせてあるタンポポの中には、種綿毛の時にすべてを込めて飛ばしてくれた願いと・いだき続ける光と熱があるのです。
孤独に押しつぶされるというのか、見えぬ先への不安というのか、なぜか眠れない夜があるものです。
「我以外、みな我が師なり」
という言葉があります。 タンポポは手助けも声がけもしてくれませんが、そこにいるだけで「エール」を送ってくれています。 送ろうとも思わず、ただ自らがその歩みをするという事で。
だれかの「エール」を力に出来るひとの生き方は、強くしなやかです。
だれかの力に必ずなれるひとです。
時節、爽秋にてこの身に心地よい頃。厳しい寒さに向かう頃でもあります。
くれぐれものご自愛念じ申し上げます。
西連寺 栗山知浩 拝