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162.『堕落』を鎮めるROCK AND ROLL
カミュの「ペスト」とか
坂口安吾の「堕落論」とか
ランボーの詩集とか
大学生の頃に買いましたけど
ほんの一部しか読んでません。
買って満足したクチで笑
【堕落論】
小林よしのりさんの
「新・堕落論」は
2018年1月に刊行されています。
漫画なのですぐに読めましたし
かなりお気に入りなので
クリニックの本棚に
置いてあります。
その中で紹介されている
坂口安吾「堕落論」で
述べられている文章に
次のようなものがあります。
〜〜〜〜以下引用〜〜〜〜
あの偉大な破壊の下では、
運命はあったが、堕落はなかった。
無心であったが、充満していた。
猛火をくぐって逃げのびてきた人達は、
燃えかけている家のそばに群がって
寒さの煖をとっており、同じ火に必死に
消火につとめている人々から
一尺離れているだけで
全然別の世界にいるのであった。
偉大な破壊、その驚くべき愛情。
偉大な運命、その驚くべき愛情。
それに比べれば、敗戦の表情は
ただの堕落にすぎない。
だが、堕落ということの驚くべき
平凡さや平凡な当然さに比べると、
あのすさまじい偉大な破壊の愛情や
運命に従順な人間達の美しさも、
泡沫のような虚しい幻影に
すぎないと言う気持がする。
六十七十の将軍達が切腹もせず
轡(くつわ)を並べて法廷に
ひかれるなどとは
終戦によって発見された
壮観な人間図であり、
日本は負け、そして武士道は滅びたが、
堕落という真実の母胎によって
初めて人間が誕生したのだ。
生きよ堕ちよ、
その正当な手順の外に、
真に人間を救い得る
便利な近道が有りうるだろうか。
戦争中の日本は嘘のような理想郷で、
ただ虚しい美しさが咲きあふれていた。
それは人間の真実の美しさではない。
そしてもし我々が考えることを
忘れるなら、これほど気楽な
そして壮観な見世物はないだろう。
たとえ爆弾の絶えざる
恐怖があるにしても、
考えることがない限り、
人は常に気楽あり、
ただ惚れ惚れと
見とれておれば良かったのだ。
私は一人の馬鹿であった。
最も無邪気に戦争と遊び戯れていた。
〜〜〜〜引用終了〜〜〜〜
戦時中は「自分の頭で考える」こと
など意味が無いので
国民の一体感の中で
耐え抜くしかなかった。
それを坂口安吾は
「私は考える必要がなかった。
そこには美しいものがあるばかりで、
人間がなかったからだ」と表現される。
【自分の頭で考えよう】
戦後生まれの私たちから見ると
戦争は、ただただ悲惨で
人々はものすごくい苦痛の中で
暮らしていた、という想像をしがちですが
「自分の頭で考える」ことを
放棄した人にとっては
理想郷であったのかもしれません。
これからの世の中は
自分の頭で考えないと
ディストピアが
待ち受けているだけだと思います。
周囲に流されず
同調圧力に負けず
自分の頭でちゃんと考えて
良い世の中を作ってきたいですね。