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メールマガジン バックナンバー
『毒』になるもの
「全てのものは毒であり
毒でないものは何もない」
パラソーサス(1493-1541)
16世紀に活躍した
パラソーサス(Wikipediaでは
パラケルススとなっています)
は医者であり科学者であり
思想家であり錬金術師でもあった
伝説の人物です。
同種療法の祖とも言える彼の
この言葉は何を意味するのでしょうか。
【DHMOの危険性】
米国のネイサン・ゾナー君という
14歳の少年が1997年に書いた次の
レポートを御存じでしょうか。
その数年前から指摘される事が
あったDHMOという科学物質の害を
説明したものでこの物質の
使用規制を求めています。
彼が列挙した危険性は
「☆酸性雨の主成分であり
地球の温暖化効果をも引き起こす」
「☆高レベルのDHMOに晒されると
植物の成長が阻害される」
「☆末期癌の腫瘍細胞中にも
必ず含まれている」
「☆この物質によって熱傷を負うことがあり
個体状態のDHMOに長時間触れると
皮膚の大規模な損傷を起こす」
「☆多くの金属を腐食・劣化させる」
「☆経口摂取で発汗・多尿・
腹部膨満・下痢を起こすことがあり
大量に摂取し過ぎると痙攣等を起こし
最悪の場合は死に至る」
そして、この危険な物質は
アメリカ中の工場で何の規制も無く
使用・排出されており、結果として
全米の湖や川、果ては母乳や南極の氷に
至るまで高濃度のDHMOが検出されていると
ネイサン君は訴えました。
さて、あなたなら呼びかけに応じて
この物質の使用規制に賛成し
署名するでしょうか?
彼は周囲の人々50名に賛同の署名を求め
うち43名のサインを得る事に成功したのです。
DHMO(DiHidrogen MonOxide)を
和訳すれば一酸化二水素(H2O)で
あり、この物質は
通常「水」と呼ばれています。
【恐怖を煽る方法】
水は人間にとって無くてはならないものです。
使用規制をするなんてナンセンスだと
誰もが思うでしょう。
しかし、ネイサン君が水の危険性を喚起した
文章に何一つ嘘は含まれていません。
熱湯を子供の手が届く所に
置いておくのは厳禁です。
いっぺんに10リットルもの水を
飲んだら人間は死んでしまいます。
水は確かに危険です。
しかし水が無いと人間は
絶対に生きられません。
騙されないようにしてください。
何かを売り込みたい人は
良い面にだけスポットライトを当てて
素晴らしいもののように
見せようとするでしょう。
悪いものだと思い込ませたい場合は
いかにデメリットがあるかに言及することで
相手の印象を悪くするのです。
針小棒大にリスクを取り上げて
恐怖を煽ることだって可能なのです。
【科学は真実について語らない】
そして、覚えておかねばならないのは
「科学は万能ではない」という点です。
DHMOの例のように
「(科学的に)本当のことを
言っているから、それが正しい」
とは限りません。
科学は真実については語らないのです。
科学も医学も大事なのは間違いないのですが
使い方や語り方によっては
いとも簡単に「毒」になってしまうのです。
世の中には科学では説明出来ないことも
まだまだ沢山あるというのに
科学にあらずば真理にあらず
というような考え方は止めた方がいいですよ。