自然派ドクター 髙野弘之

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『医原病』を作る人たち

いつも自己紹介で話すことなのですが
わたしが医者になって3年目に
長崎の離島へ赴任した時に
「自然豊かな良い所で暮らしているのに
なぜ病気で受診する人が多いのだろう?」
と純粋な疑問を抱いたことが
現在このような考え方で
診療や講演をやっている契機と
なったわけですが
島に行って1ヵ月くらいで分かったのは
病院でどっさり出される薬のせいで
島民の皆さんの健康が損なわれている
ということでした。

【原因不明の風土病?】

医者になって6年目のこと
五島列島の病院に転勤した日に
先輩の小児科医から言われました。
「ここでは最近、謎の風土病が流行している」
わたしが五島に赴く3ヵ月くらい前から
気管支炎がこじれて入院する子が多く
いつも使う抗生剤を点滴して治療しても
全く改善しないので
本当は子供に使ってはいけない
テトラサイクリン系という
抗生剤を注射して
なんとか治っているというパターンが
続いているのだ、と。

わたしは、その頃には既に
色々と気付いていましたし
テトラサイクリン系みたいな
子供には原則禁忌(基本的に
絶対使ってはいけない)の薬
を使う気もさらさら無かったので
どんなものなのかと
先輩医師のやっていることを
うかがっていました。

幸い、赴任後に自分自身が
テトラサイクリン系の薬を
お子さんに使うことは
ありませんでした。

謎の風土病は
2人いる小児科医のうちの
1人が抗生剤を殆ど処方しないことで
発生しなくなったのです。

つまり、スタンダードな治療で
改善しない気管支炎は
五島独特の風土病ではなくて
ちょっとした風邪でも抗生剤を飲ませまくる医者が
2人揃っていたことによる医原病だったのです。

【切り札を無力化する行為】

抗生剤は、菌が繁殖して
重症化したり死にそうになったり
している時には治療に必要な
大切な薬です。
それで命を救われる人も
たくさん居るわけです。
ですから、いざという時の“切り札”として
しっかり温存しておくべきものなのです。

その“切り札”が無力化することがあります。
抗生剤の「濫用(らんよう)」でそうなります。
耐性菌が発生して効かなくなるのです。

普通は、高熱が出ても咳がひどくても
飲み薬の抗生剤が必要となる場面は
ほとんどありません。

【大富豪がヘタな人】

島での先輩の医者もそうでしたが
普通の医者の抗生剤の使い方を見ていると
うちの息子が小学生の頃に
トランプの「大富豪」をやっていた時の
カードの出し方を思い出します。
せっかく良いカードが手元にあっても
最初から強いカードを出してしまうので
全然勝てないのです。
ただし、小学生でも
何回もやっているうちに
この出し方では勝てない、と学んで
切り札になるカードを温存できるように
なっていきます。

小学生でも学んで理解できることを
いつまでも分からない医者って
なんなのでしょう。

皆様におかれましては
不要な抗生剤の服用は
くれぐれもお気を付けくださいね。

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