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メールマガジン バックナンバー
幽霊の特徴、西蓮寺です。
幽霊ご覧になった事ありますか? ・・ない。そうですか。
幽霊の特徴ってご存知ですか? 三つあるんですが。
ひとつめ、髪が・・・長い。そう、よくご存知で。
ふたつめ、手は・・・前にダランと。そう、よくご存知で。ガッツポーズでは出てきませんね。
みっつめ、足が・・・無い。ホントに見た事ないんですか?
見た事ないのに何故よく知っておられるんでしょう。
まあそれはいいとして、そうです。日本の幽霊はこの三つの特徴があります。
(ちなみに西洋の幽霊は足があるけど首が無いそうで。古城の深夜、ガチャっ・・ガチャっと不気味な足音。ギ~と扉が開いたら甲冑をつけ首を落とされた騎士が・・だそうです。)
「うしろ髪を引かれる」という言葉がありますが、悔いても悔いきれぬ過去への後悔があるから、幽霊さんは髪が長いのだと。「過去への後悔」
力なく前にダランと出した手、これはこの先どうなるか分からない。
掴みようのない「未来への不安」
過去未来ときたら、そう。現在です。
今、この場所にしっかりと立てない。地に足をつけて立てない姿。
もっと言いましたら、地に足をつけていないという事はわたしを支えてくれてある多くの「支え手」が見えないという事です。「見えぬ現在」「見えぬ自分の姿」
そうです、幽霊の姿はわたしの姿です。こうなっているんじゃないですか?という、わたしへの問いかけです。
思っても仕方ないと分かっていると言いつつ、過ぎた過去に縛られ悩みに耽る。
ああしたいこうしたいとの未来の夢だけ巡らせながらも、取り越し苦労の不安のために一歩も踏み出せず何も掴めない。
自分の力だけで頑張っているとの大きな勘違いを勘違いと知る事もないゆえ、道をしっかり歩むことが出来ず、人と離れてフワフワと。
幽霊、そのダランとした手を胸の前に合わせる事が出来たら。
無数の網の目のごとき縁の中で全ての力に支えられて今がある、と目が開かれたら。
無数の力に支えられてあるという事は、同時にわたしは全ての有縁を支えてあるのだと清らかに立てたら。
幽霊は、幽霊じゃなくなるんですが。
・・・涼しくなってきたのに、幽霊のちょっとしたお話でした。
涼しくなってきて夏の疲れが出る頃です。 ご自愛くださいませ。
西蓮寺 住職 栗山知浩