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【第3回】仕事か、家族か。「絶対休めない日」に起きたこと
【全11回連載ストーリー:第3話】
こんにちは、菊地です。
母が倒れてからも、私は「仕事」を理由に、
介護の現実から目を背けていました。
しかし、限界は静かに、でも確実に近づいていたのです。
<すがったのは一言、手放せなかったのは自分>
介護も家のことも、日中は父が一人で担っていました。
母の変化に向き合えず、
私は仕事を理由に距離を取っていたのです。
けれど、そんな私を、父は一度も責めませんでした。
「仕事を続けなさい」
そう言って、愚痴ひとつこぼさず、
毎日をまわし続けていたのです。
その姿に、あるときふと、怖さがこみ上げてきました。
──ああ、父がもし倒れたら、うちは終わる。
その頃には、母はすっかり「できないこと」の方が
多くなっていました。
さらに舌がんを患い、飲み込むことも困難になり、
食事の介助に数時間かかることもありました。
私が仕事から帰って父とバトンタッチするだけでは、
どうしても限界があったのです。
そんなある冬の夜中、母が救急搬送され、
父が病院に付き添いました。
私はそのとき、父に言ったのです。
「そのまま病院に泊まって」
あれは土曜日の深夜で、翌日の日曜日には、
大きなイベントが控えていました。
絶対に休めない。朝から晩まで走り回る現場で、
私も体力を温存する必要がありました。
たとえ大切な家族の一大事でも、
私は「仕事」を優先したのです。
そのとき、心のどこかで何かが崩れたのを覚えています。
もう、限界でした。
(続く)