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健康第一‼️【NEWS‼️】 2025年のノーベル医学生理学賞は「末梢性免疫寛容に関する発見」!!
【NEWS‼️】
2025年のノーベル医学生理学賞は、「末梢性免疫寛容(peripheral immune tolerance)」に関する発見、すなわち「制御性T細胞(regulatory T cell, 通称 Treg)」の役割を明らかにした業績に対して授与されました。
こちらのメッセージはあくまでもオーナー平個人の見解であり、今後、ジェルアレルギーなどの懸念がある方々への朗報と感じています⭐️
健康に関する記事はたくさんありますが、とても大事なニュースと感じメッセージをさせていただきました。
骨格骨盤調整や整体、ネイル、などなど様々な分野に画期的な分野と感じています☺︎
【まずはT細胞ってなぁに?】
だいぶ前から坂口教授が研究している分野になります。
以下、T細胞一般と、今回のノーベル賞対象となった制御性T細胞を中心に、整理し、それから「人類にとってのメリット・デメリット」を考えてみます。
1. T細胞とは?
まず、免疫(体を病原体などから守る仕組み)の中で、T細胞がどんな役割を果たしているかを見ておきましょう。
1.1 免疫システムの全体像(おさらい)
私たちの体には、ウイルス、細菌、がん細胞など「異物」が入ってくる可能性があります。
それらを排除するために「免疫システム」があります。
免疫には「自然免疫(先天免疫)」と「獲得免疫(適応免疫)」という大きな2本柱があります。
自然免疫:最初に働くおおざっぱな防御。白血球の一種(マクロファージ、好中球、ナチュラルキラー細胞など)が関与。
獲得免疫:より“的を絞った”防御。B細胞が作る抗体や、T細胞などがこれに含まれます。
1.2 T細胞って何?
T細胞(T lymphocyte, Tリンパ球)は、白血球の一種で、獲得免疫の中で非常に重要な役割を果たします。
名前の由来は、これらの細胞が胸腺(Thymus)という器官で成熟するところから来ています。
T細胞は、直接「感染した細胞を殺す」ことも、「ほかの免疫細胞を助ける」こともでき、その種類や状態によって振る舞いが変わります。
T細胞は、抗原(=異物の目印)を認識する受容体(TCR=T-cell receptor)を持っており、それが異物を見つけて反応を引き起こします。
1.3 T細胞の主な種類と機能
以下、代表的なものを挙げます:
種類 役割(大まかな説明)
細胞傷害性T細胞(CD8⁺ T細胞) ウイルスに感染した細胞やがん細胞を直接“殺す”能力を持つ
補助性T細胞(CD4⁺ T細胞、ヘルパーT細胞) 他の免疫細胞(B細胞、マクロファージ、CD8 T細胞など)を指令・助ける
記憶T細胞 過去に出会った病原体を「記憶」しておき、再度侵入したときには早く反応できる
制御性T細胞(Treg, regulatory T cell) 免疫反応を「抑制」する役割を持ち、自己を攻撃しないようブレーキをかける
今回ノーベル賞が与えられたのは、上記表の一番下、「制御性T細胞(Treg)」の発見とその機構に関わる研究です。
2. ノーベル賞対象:制御性T細胞(Treg)とは何か?
なぜ今回、制御性T細胞(Treg)が注目されたのか。その発見と意味を順を追って説明します。
2.1 問題意識 — 免疫の“暴走”
免疫が強く反応しすぎると、健康な自分自身の組織を攻撃してしまうことがあります。これが「自己免疫疾患(例:1型糖尿病、関節リウマチ、潰瘍性大腸炎など)」です。
これを防ぐため、体には「免疫を止めたり抑えたりする仕組み」が必要です。
これまで知られていた仕組みには「中心的耐性(central tolerance)」というものがあります。これは、T細胞が胸腺で生成されるとき、有害な反応を起こす可能性があるものを除去する仕組みです。
しかし、それだけでは十分ではなく、成体になってからも免疫を制御する仕組み(「末梢耐性(peripheral tolerance)」)が必要と考えられていました。
そこで、制御性T細胞(Treg)がその鍵ではないかという仮説が持たれていました。
2.2 発見の流れ
1995年、坂口志文(Shimon Sakaguchi)博士は、マウスで CD25 マーカーを持つ T 細胞を除去すると、自分自身を攻撃するような強い免疫反応が起き、自己免疫疾患様の症状が出ることを示しました。これが「抑制機能を持つ T 細胞」の存在を示す最初の一歩でした。
その後、2001年に Mary Brunkow と Fred Ramsdell が、あるマウスが自己免疫疾患を起こす原因(遺伝子変異)を調べ、その遺伝子を “Foxp3” と名付けました。さらに、ヒトでも相当する遺伝子変異が自己免疫疾患(IPEX 症候群など)と関係していることを示しました。
最後に、坂口博士らは Foxp3 が Treg の発生を司る遺伝子であることを結びつけ、Treg の分化や機能を制御するメカニズムを明らかにしました。
これらの発見により、「免疫システムの中に “抑制” の機能を担う細胞がある」という理解が確立されました。
2.3 制御性T細胞(Treg)の働き
具体的には、Treg は次のような機能を持ちます:
他の活性化T細胞(たとえば、異物を攻撃する T 細胞)を抑えたり、過剰反応を防ぐ
炎症が収まるように“ブレーキ”をかける
自己成分(自分自身のタンパク質など)を攻撃しないように免疫を制御
移植された臓器への攻撃を防ぐ手助けをする可能性
このような制御の仕組みがなければ、免疫は暴走してしまい、自己免疫疾患が頻繁に起きるでしょう。
3. 人類にとってのメリット・デメリット(リスク・課題含む)
この発見や制御性T細胞の理解が進むことには、非常に大きな意味があります。ただし、万能というわけでもなく、リスクや課題もあります。以下に整理します。
3.1 メリット(恩恵・可能性)
自己免疫疾患の治療法向上の可能性
Treg を増やしたり活性化したりすることで、関節リウマチ、1型糖尿病、多発性硬化症、潰瘍性大腸炎など、自分の体を攻撃してしまう疾患を抑制できる可能性があります。
移植医療の改善
移植臓器(腎臓、肝臓、心臓など)を体に入れたとき、受け入れ側の免疫がそれを異物と見なして排除しようとします。Treg を使って免疫反応をコントロールできれば、移植成功率を上げ、免疫抑制薬の副作用を軽くする可能性があります。
がん治療との併用・調整
がん免疫療法(例えば、T細胞を活性化してがんを攻撃させる手法)では、「抑制を外す」ことが目標になることがあります。一方で、抑制過多になるとがんの制御が弱くなります。Treg の調整を通じて「攻撃と抑制のバランス」をとる戦略が考えられます。
炎症疾患・アレルギーの制御
アレルギーや過剰な炎症反応を抑える手段として、Treg を活用できる可能性があります。
基礎免疫学の理解深化
免疫システムを設計・制御する“安全装置”の理解が深まることで、新薬開発や治療戦略の幅が広がる。
実際に、今回ノーベル賞を受けた Brunkow/Ramsdell が関わる企業(Sonoma Biotherapeutics など)は、Treg を利用した治療の研究を進めているという報道が出ています。
Fierce Biotech
3.2 デメリット・リスク・課題
抑制しすぎるリスク(免疫抑制)
Treg を過剰に働かせすぎると、体内の異物(ウイルス、細菌、がん細胞など)への免疫応答が弱くなってしまう可能性があります。要するに「必要な防衛も抑えてしまう」リスクです。
がんに利用されるリスク
がん細胞はしばしば自己防衛機構を発達させており、Treg を自ら誘導して「自分を攻撃しないように」免疫を抑えさせる戦略をとることがあります。つまり、がん組織が免疫抑制を利用して生き残る手段としてTreg を悪用する可能性があります。
細胞操作・治療の安全性・制御性
Treg を増やしたり操作したりする治療を人に適用するには、多くの技術的・安全性のハードルがあります。たとえば、どの Treg を使うか、どのタイミングで働かせるか、どれくらいの強さで制御するか、制御不能にならないかなど。
個人差・複雑性
免疫は非常に複雑なシステムで、個人によって反応が異なります。Treg 操作が、体質や環境、他の免疫系との兼ね合いなどで予期せぬ副作用を引き起こす可能性があります。
コスト・実用化の壁
細胞治療や遺伝子操作を含むような先端治療はコストが高く、すぐに一般に広まるわけではありません。また倫理的・規制的な課題も出てきます。
4. 総括と展望:今後に期待できること
今回ノーベル賞が与えられた発見は、「免疫システムにおける抑制・制御のしくみ」を明らかにしたという点で、私たちの体の安全装置を理解するようなものです。これにより、以下のような未来が期待できます。
自己免疫疾患を根本から治すような治療法(あるいは寛解を高める治療法)の開発
移植医療における拒絶反応の抑制、免疫抑制薬の軽減
がん免疫療法との組み合わせ戦略 — 攻撃する免疫と抑制する免疫のバランス制御
炎症・アレルギー抑制への応用
個別化医療:各人の免疫バランスを見ながら最適な制御をする治療
とはいえ、実際にこれらを安全かつ効果的な治療として人間に適用するには、まだ多くの研究が必要です。抑制と活性のバランスを誤ると、感染しやすくなったり、がんを見逃したりする危険もあります。