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化粧品の成分表示ってどう見るの?40代からの“わかる”成分読み方ガイド
化粧品のパッケージ裏にずらりと並ぶ「成分表示」って見たことありますか?一度でも意識して見たことがある方にはよくわかると思いますが、「文字がいっぱいで何が書かれているのかよく分からない〜!」と思う方がほとんどではないでしょうか…。「食品の裏は見るけれど、化粧品はなんだか難しそう」と思う方もきっと多いと思います。
40代を過ぎると、肌の変化を感じる機会が増えて、できるだけ肌に合うもの、そして効果が期待できるものを選びたいという気持ちが強くなりますよね。でも、化学的な成分名を目の前にすると、それらをどう読み解いていいのか分からないまま終わってしまうことも少なくありませんよね。
今日のメルマガでは、薬事専門家であり化粧品製造工場経営者としての視点から、難しい専門用語をできるだけやさしく置き換えながら、成分表示を「自分で読める」ようになるための前段階として、読み方の基本とコツを紹介していこうと思います。
これを知れば、自分が求める美容成分がしっかり配合されているかどうかを、ある程度自分で見極められるようになります。(そうなって欲しい。笑)
【成分表示の基本ルール】
日本の化粧品には、すべての配合成分をパッケージに表示する「全成分表示」が義務づけられています。この並び方にはルールがあって、配合量が多い順に書くのが基本です。要は、最初に書かれている成分ほど配合量が多く、最後に近づくほど少なくなるということ。ただし、配合量が1%以下の成分は順不同で書いてよいとされているので、1%以下の配合量になると順番を自由にしてもよいため、ごちゃごちゃに混ぜて書かれている可能性があるんですね。なので、この境目を見極めるための「1%以下のルール」をお伝えしたいと思います。
1%以下のラインは表示からは直接分かりませんが、成分の傾向を知ることで推測することが可能なんですね。また、着色料は配合量にかかわらず最後に書く、という決まりがあるので、例えば、酸化亜鉛や酸化チタンという成分は、紫外線散乱剤成分として使われる場合は前の方にあって、カラー(着色)の目的の場合は最後に記載されたりしています。
【化粧品と医薬部外品の違い】
肌につけるものには「化粧品」と「医薬部外品」があります。ちょっと分かりにくいかもしれませんが、薬用化粧品は医薬部外品になります。なので、医薬部外品と聞くと「化粧品より効果が高い」と思われる方もいますが、必ずしもそうとは限らないんです。
医薬部外品には、厚生労働省が効果を認めた有効成分が決められた範囲で配合されています。下限も上限も決まっているので、場合によっては化粧品の方が高濃度で配合できるケースがあります。例えばビタミンCは、医薬部外品では数%が上限ですが、化粧品では10〜20%などと高配合できる場合があります。濃度だけを見れば、化粧品の方が高い効果を狙える可能性もあるのです。
また、同じ成分でも表示名が異なることがあります。たとえば、化粧品で「ナイアシンアミド」と書かれる成分は、医薬部外品では「ニコチン酸アミド」と表示されます。「BG」は「1,3-ブチレングリコール」、「グリセリン」は「濃グリセリン」といった具合です。これは成分名を登録するルールが異なるためで、成分表示を読む際には注意が必要です。
【海外の化粧品成分表示ルールはどうなっているの?】
ここまで日本のルールを見てきましたが、「では海外ではどうなの?」と気になる方もいると思います。実は、成分表示の歴史や規制の厳しさは国ごとに違いがあります。
アメリカでは、1976年から化粧品に成分表示が義務づけられました。現在は国際的に統一されたINCI名での表示が基本となっており、2022年に成立したMoCRAという新しい法律では、製造施設の登録やアレルゲン表示などが強化されています。FDAが製品の回収命令を出せるようになったことも大きな変化です。
ヨーロッパでは、同じく1976年に「化粧品指令」が導入され、その後2009年に制定された化粧品規則(EC 1223/2009)が2013年から完全施行されました。EUは特に規制が厳しく、成分表示だけでなく製品ごとの安全性評価、責任者の設置、アレルゲンの表示などが法律で義務づけられています。近年は香料アレルゲンの表示範囲がさらに広がる改正も行われました。
オーストラリアでは、1991年頃から成分表示が義務化され、2020年には「化粧品成分情報スタンダード」が定められました。こちらもINCI名での表示が基本ですが、ヨーロッパほど厳しい安全性審査までは求められていません。表示義務はありますが、制度としては比較的シンプルです。
日本では2001年から全成分表示が始まっており、歴史的にはアメリカやヨーロッパより少し遅れて制度化されました。ただ、基本のルールは共通しています。配合量の多い順に記載し、1%以下は順不同という仕組みです。違いが出やすいのは表示名、アレルゲン表示、安全性評価の厳しさといった部分です。
こうして比べてみると、日本の制度も国際基準を踏まえて作られていることが分かります。成分表示を見るときに「これは日本独自のルールなのか、それとも世界共通なのか」と意識してみると、化粧品の理解が一段と深まります。ちなみに私は、韓国が日本に倣って全成分表示にしたときに、韓国の政府に日本の薬機法についてアドバイスした経験があります!
【1%ラインを見極めるコツ】
1%ラインを推測するためには、どの成分が1%以上入りやすいか、逆にどの成分が1%以下になりやすいかを知っておくことが大切です。1%以上配合されやすいのは、水や油分、界面活性剤、グリセリンやBGなどの保湿成分、成分を溶かす溶剤、そして日焼け止めに使われる紫外線予防の成分などです。一方で、植物エキスや植物オイル、セラミド、ヒアルロン酸、防腐剤や酸化防止剤、増粘剤などは、ほとんどの場合1%以下にとどまります。
成分表示を見て、油分や保湿成分などが続いた後に植物エキスが出てきたら、そのあたりが1%ラインの目安です。また、メーカーは印象の良い美容成分を目立たせるため、1%以下でも前の方に並べることがあります。複数の植物エキスや美容成分が固まって表示されている場合は、そのような意図が働いていることも多いのです。
【効果が期待できる濃度の目安】
特定の美容成分は、ある程度の濃度を超えないと効果を発揮しにくいことが知られています。たとえば、最近話題になって人気になっている成分の例を上てみると、レチノールは0.1%、ナイアシンアミドは3〜5%、ビタミンC誘導体は3〜10%、アゼライン酸は5〜10%程度が目安とされます。これらの成分が1%ラインよりも上にあれば、有効量が配合されている可能性が高いと考えられます。逆に下にあれば、含まれていてもごく少量である可能性が高いと読み取ることができます。
【成分表示を見るときの注意点】
成分表示は役立つ情報ですが、それだけで化粧品の効果を完全に判断することはちょっと難しいと思います。配合量が少なくても、浸透を高める処方や特殊な製法で高い効果を出す製品もあったりもします。また、植物エキスの種類が少ない場合には1%以上配合されることもあります。特に医薬部外品は成分名や順序が化粧品と異なるため、慣れるまでは少し難しく感じるかもしれません。
【最後に…】
成分表示には、「配合量の多い順に記載」「1%以下は順不同」という基本ルールがあります。この1%ラインを見極められるようになると、美容成分の有効量が配合されているかどうかをある程度予測できます。医薬部外品が必ずしも化粧品より効果的とは限らず、成分名の違いにも注意が必要です。
今日から、手持ちの化粧品の裏面をチェックしてみましょう。「この成分、ちゃんと入ってる!」と分かると、コスメ選びがもっと楽しく、納得感のあるものになります。知識を味方に、あなたの肌に本当に合う化粧品を見つけてくださいね!