こそだてOASISオーシャンキッズ

mail magazine backnumber

メールマガジン バックナンバー

「3歳児神話」について改めて考えるー早期保育利用はこどもの発達にどう影響するのか?ー

こんにちは。
日本抗加齢医学会専門医として「成長」と「予防」に取り組む、こども未来クリエイターの日比将人です。

今日は、子育てにおいてよく耳にする「3歳児神話」について、最新の研究結果をご紹介します。

我が家でも時々、妻が後悔しているかのようにこう言います。

「保育園に預けずに、仕事を辞めればよかった・・・」

この神話――「子どもは3歳までは家庭で、特に母親の手で育てるべき」という考え方――は、1998年の厚生白書でも「科学的根拠がない」とされてきましたが、今なお根強く残っている印象があります。

そんな中、東北大学の研究グループがこの神話に対する大規模な検証を行い、注目すべき結果が報告されました。

この研究は、環境省が全国約10万組の親子を対象に行っている「エコチル調査」のデータを活用したものです。約4万人の3歳児のデータを分析し、1歳未満から保育施設を利用した子どもたちと、家庭で育てられた子どもたちの発達状況を比較しました。

発達の評価には、「ASQ-3(Ages and Stages Questionnaires)」という、世界的に信頼されている発達チェックツールが用いられました。その結果、保育施設を早期に利用した子どもたちは、3歳時点で「コミュニケーション力」「問題解決力」「社会性」など、全ての発達領域でより良い結果を示しました。

たとえば、コミュニケーションの分野では、保育施設利用群のうち発達の遅れが示唆された子どもは2.1%だったのに対し、非利用群では5.7%。他の分野でも同様に、統計的に有意な差が見られました。

この結果は、早期の集団保育が、子どもにとって多様な人との関わりや新しい経験の機会を与え、それが発達を促進する可能性があることを示しています。

もちろん、今回の研究はあくまで3歳時点の発達に関するものであり、母子関係や子どもの心理的安定までを評価したわけではありません。保育施設の利用がすべてにおいて家庭保育より優れている、という話ではありません。

ですが、

「預けることが悪いことではない」

「早くから保育園に通わせることに、後ろめたさを感じなくていい」

というメッセージを、科学的根拠とともに届けてくれた今回の研究は、私たち子育て世代にとって大きな安心材料となるのではないでしょうか。

働きながら子育てをする。その選択が、子どもの発達に良い影響を与える可能性がある。それが、今回の研究から見えてきた明るいニュースです。

これからも、皆さんと一緒に、子どもたちの「未来につながる行動」について考えていけたらと思います。

メールマガジン バックナンバー

過去にお送りしたメールマガジンをバックナンバーとして公開しています。

メルマガを購読する