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「たて糸 よこ糸」 西連寺です。

 「軸となるたて糸をしっかりと張っていれば、少々のハプニングがあっても大丈夫。」
和紙を糸にして衣服を制作されている河村朱美さんの言葉に朝刊で出会いました。たて糸。漢字で経糸。経といえばお坊さんが読む「お経」。お経とは、まさしく「たて糸」を意味しています。

織物を織る時には何よりまず「たて糸」を何本も張ります。そこに「よこ糸(緯糸)」を流してトントンと詰めていって次第に布が出来上がります。たて糸が張られていない所にどれだけ多くのよこ糸を重ねてもバラバラになるばかりです。その大事な「まず張るたて糸」が示し書かれてあるので「経」、「お経」と申します。

 千年前のひとにも今のひとにも千年後のひとにも共通する大事なお話、ヨーロッパのひとにも日本のひとにもアフリカのひとにも共通する大事なお話。わたしの人生にまず大事な縦糸をしっかり張って、そして毎日の出会い出来事のよこ糸を入れ重ねていくと そこにわたしだけの一枚の布・反物が織り上がります。

 わたしだけの布。複雑繊細な柄を織りあげるひともあるでしょう。無地に近い布、節くれ玉糸紬糸わたしだけにしか織れない一枚の布。

 『 人生やり直すことは出来ないが、見直す事は出来る 』
織りあげつつあるこの布、立ち止まりジッと見つめていると当時と違うものが見えてくるかも知れません。時間たって色々あったからこそ見えるもの。
          さて、この先どう織りあげましょう。

 『 人生に失敗がないと、人生に失敗する 』
なるほどなあ・・とのこのお言葉、後悔という言葉を入れ替えてみるとどうかなと。
後悔なきひとは無いでしょうが、キチンと後悔する。
 『 人生に後悔がないと、人生に後悔する 』
          さて、この先どう織りあげましょう。

 失くしたもの・会えないひと・手に入らないもの。
不安や喪失感などの心を痛ませるものもわたしの人生のよこ糸です。
喜びや楽しみだけでなく、これらもわたしの大事な人生の荘厳です。
一本一本たて糸に流し込み トントン詰めて出来上がるわたしだけの織物。
     味わい深い一反の反物が織り上がります。

 織り上がったわたしの織物、誰かが見つめます。
    「ああ こう織っておられるのか・・」

 そのひとの次のよこ糸に わたしの人生が織り込まれていきます。 繋がりました。

     ひとりのもので終わらず、過去・現在・未来を貫いてまいります。

        これも大事な ≪たて糸≫ のお話。


 新しい年を迎えます。どうかお身体 お心 お大事お大切、念じ申し上げます。

               西連寺 住職  拝


 
 

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