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「この世のパラダイス」。 西連寺です。
爽やかな心地よい頃です。
季節四つあるとはいえ、四等分ではなく暑い季節と寒い季節が随分長く厳しくなってきた様に思います。
困ったもんです。暑いと暑いし、寒いとさむいし・・。
この世にどこかパラダイスはないか。 ありました。
そこは暑くもなく寒くもなく、したがって着る服を考えて調節しなくてもよく。
それどころか食べる心配をしなくてもよく、したがって働かなくてもよく。それでいて勿論お腹も栄養も十分満たされていて。外敵に襲われる怯えもなく、眠りたかったらずっと寝ていてもいいし 起きていたかったら起きていてもいいし。 エっ、そんな桃源郷・パラダイスがこの世界のどこかに実在するんですか?
するんです。
それは「母胎」です。
母親の胎内は暑くもなく寒くもなく、食べる心配もない。母親が難儀してでも栄養を届け与え続けているんです。働かなくってもいい、寝ていてもいい。 抱かれ護られ生命が存在するには実に適した場所です。
この世にあるに違いはありませんから、まさしくこの世のパラダイスです。
ところが、そこから生まれ出てしまいます。 これほど素晴らしいところは無いのに出てきてしまいます。
お釈迦さまは、「そこを捨てて出て来る」と。 捨ててって・・・とも思いますが。
生まれ出たら大変です。 暑いし寒いし。 お腹は空くし喧嘩はするし。 働かなくてはならないし、ケガするし病気になるし、生老病死・愛別離苦・怨憎会苦・求不得苦・五蘊盛苦の四苦八苦の世界。
兎にも角にも苦しい世の中、一体 生まれ出て来て何か「いい事」はあるんでしょうか?
あるんです。
それは「出会える」という事。
この世界は、出会いの世界なのです。
母胎内は確かに生命体が存在するには最も適した何不自由のないところですが、「出会い」のない世界です。
声は聞こえているとも言いますが、実際に目を見つめ合って笑い合うことも手を繋ぎ合う事もありません。
生まれて来て親に出会う・兄弟に出会う・親族に出会う・友人に出会う・先生に出会う・大事な人に出会っていきます。 そして、「出来事」と出会ってゆきます。 それは楽しくいい事ばかりではなく、悲しい事や辛い事も含めて。
その「出来事」に出会う度に、「新しい自分」と出会ってゆきます。
こんな事を私は思うんだ・・・こんな事でまだ泣くんだ・・・こんな事でこんなに喜ぶんだ・・。
暑くて寒くて辛くて思い通りにならない事ばかりのこの世界ですが。
まだまだ、これから出会ってゆきますよ「新しい自分」に。
自分の事は自分が一番よく知っている、といいますが。そんな事ありませんよ。
どんどん出会ってゆきます、深く深く。 『 日々誕生 』です。 出会ってまいりましょう。
末筆、お身体くれぐれもお厭い下さいませ。
西連寺 栗山知浩 拝