どうやって差別化するか？

2010年にそれまで全くやったことのなかったハウスクリーニング事業を立ち上げることになり、安全な洗剤を探していた。その時に見つけたのが日本グリーンハウスクリーニング協会のホームページ。ちょうど近所に協会に加盟している事業者さんがいて、HEJの開発者の岡崎さんの勉強会に参加させてもらったのが最初のきっかけ。

でも、当時僕は清掃業界が全くの初めてで、比較の対象がないから、HEJのすばらしさに気づくことはできなかった。ただ、その時に会った岡崎さんの印象が強烈に残っていて、いずれこの人からいろいろ学びたいと思ったんだよね。

それから時は過ぎ、岡崎さんと再会を果たすのは2014年になってから。僕は独立してから5年目に入っており、そろそろ情報発信して周りの事業者と差別化を図らないといけないなと考えていた。ただ、お掃除のやり方なんて発信してもしょうがないし、どうしようかなと思っていたところに岡崎さんの存在を思い出した。

当時、岡崎さんの話が印象に残っていた理由は、岡崎さんが発信している情報の質が他とは全く違っていたことだ。掃除の勉強会に化学式を用いて説明してくれた。それを聞いていて、こういう情報が必要だ！と強烈に共感したことを覚えていた。

府中事件

そして、2014年に再会して、岡崎さんに教えてもらった最新情報を聞いて、僕はHEJを取り入れることを決めた。一般の人には知られていなかったが、業界ではその後業界誌に取り上げられるような事件が起きた。それが「府中事件」だ。府中事件についてはまた改めて記事を書きたいと思うが、簡単に説明すると、大手ハウスクリーニング会社が業務用の洗剤を持ち込んで一般家庭をハウスクリーニングし、その家をシックハウスにしてしまって、住人が「化学物質過敏症」になってしまったというものだ。

こちらは日本グリーンハウスクリーニング協会発行のレポート

これは僕にとってかなりの衝撃的な情報で、すぐにHEJを使うことを決めた。というのも、この業務用洗剤というものは、特別に毒性が強いというものでもなく、一般的に販売されている業務用の洗剤だったようだ。ということはつまり、自分が使っている洗剤でもこのような事件が起きることを意味していた。僕は当時、6人の子供たちのママ友の紹介で仕事をさせてもらっていたので、もし、このようなことが起きてしまったら大変なことになる。ここに住めなくなるなと恐怖を感じた。

僕は今でこそ、完全に安全なものだけでハウスクリーニングをすると決めて行動に移すことができているが、それでもHEJを取り入れた当時は既存の洗剤とHEJを混ぜて使っていた。HEJには「グリーンナイズ機能」という化学物質の毒性を、生体にダメージを与えないように変えることができる機能がある。例えば、強アルカリの苛性ソーダや、強酸の塩酸やフッ酸などに超重曹を混ぜることで、素手で触れるようになる。しかも、phはほとんど変わらないので、毒性を消して洗浄能力はそのままに使用できるというもの。僕はHEJを取り入れた後も、この機能を使ってしばらくは掃除を続けていた。

僕にも起きたもう一つの事件

しかし、僕にも事件が起きる。僕の営業エリアで一番お客さんが多かったマンションで異臭騒ぎを起こしてしまったのだ。当時、僕にとって一番最悪なことを起こしてしまったとショックを隠しきれなかった。でも今考えると、あの最悪なことがあったおかげで、今の100%安全なものしか使わないという割り切りができたので、お客さんには迷惑をかけてしまって申し訳なかったが、僕にとってはありがたいことだった。異臭騒ぎというのは、浴室清掃の際に、混ぜてはいけない洗剤を混ぜてしまって化学反応して毒性のある異臭を発生させてしまったと消防車を呼んだのだった。そこのマンションは1000世帯ほどあるマンションで、そこに7台くらいの消防車、救急車などが駆けつけた。もうここで仕事ができなくなるなと本当に落ち込んだ。結果、消防の方に調べていただいて、異臭は発生していなかったのだが、僕の体は確かに反応していて、密室で異臭を体感した時の恐怖はその後も忘れることはできなかった。

そんなことがきっかけとなり、もう100％安全なものだけでやろう。コストの問題ではない。お客さんに絶対に大丈夫と言い切れるものだけを使おう。ここまで振り切れたのは、異臭騒ぎを起こし、「安全」というものが担保されていることが最も大切な基準だということがわかったからだ。

その後、基本的にはHEJをメインの洗剤として使い、水垢系の汚れも素手で扱えるコンパウンドを使用して、アトピー、アレルギー、化学物質過敏症、赤ちゃん、お年寄りの方など、体調に特に気をつけなくてはいけない人たちにも自信を持ってご案内することができるようになった。いま現在、化学物質過敏症の方はどんどん増えており、またアレルギーを始め、化学物質が原因と思われる体調不良の方の数はとても増えている。こうなると、100%安全をうたえる超重曹を使ったグリーンハウスクリーニングは強い。その価値に気づく一般の方は増えているし、今後も増え続けるはずだ。どんな方でも100％安全ですと言い切れる品質のお掃除をお届けするには、100％安全な洗剤を使うしかない。素手でお掃除をやり続けている自分の手が一番の証拠だと思う。