本当に循環する事業とは何か?——民泊から見えた「喜びの循環」

SDGsという言葉が広く聞かれるようになって久しいですが、本当に循環する仕組みとは何かを考える機会が増えました。

ソフトウェア開発に長年携わってきた私は、職業柄、システム思考に慣れ親しんできました。

システム思考とは、個々の出来事だけを見るのではなく、それぞれのつながりや循環から全体を捉える考え方です。

この視点から時代の流れを捉えてみると、本当の意味で循環する仕組みの原理が見えてきたように感じます。

そこで、今回はその考えを少し共有してみたいと思います。


長く続くビジネスの生命線


ビジネスや会社経営には、循環する仕組みが欠かせません。

なぜなら、一時的な収益だけでは、事業を長く続けられないからです。

また、短期的な収益を優先しすぎると、仕組みに無理が生じ、事業の継続が難しくなることもあります。

では、本当の意味で収益が生まれ続ける仕組みとは、どのようなものなのでしょうか。

私は多くの本を読み、さまざまな著者と会って学んだことを、開発(製造業・サービス業)、旅館業(大家業)、農業など、自ら実践する事業に生かしてきました。

その中で、次第に見えてきたものがあります。


それは、長く続くビジネスには「喜びが循環する仕組み」があるということです。

関わるすべての人の喜びが循環しているかどうか。これこそが、私の見いだしたビジネスの生命線です。

一度に大きな収益を得られなくても、必要な利益を確保しながら喜びの循環を積み重ねることで、事業は長く続けられます。

大切なのは、この循環を損なうことなく、事業を育てていくことです。


事業を続けていれば、さまざまな出来事に直面するでしょう。

そのような状況でも、喜びがきちんと循環し続ける仕組みでなければなりません。

事業を育てていく過程で、どこかに無理が生じることもあります。

そうなれば喜びは薄れ、関わる人に負担がかかるでしょう。

だからこそ、循環を妨げる問題を未然に防ぎ、起きた問題は一つずつ解決しながら進んでいく必要があるのです。


気持ちよくお金を稼ぐとは


そもそも、私が「本当に循環する仕組み」について考え始めたきっかけは、「どうせ自分の事業を始めるなら、気持ちよくお金を稼ぎたい」という思いでした。

会社員として働く場合、組織の方針や自分の役割との兼ね合いから、自らの価値観だけで仕事やお金の稼ぎ方を決めるのが難しいこともあります。

一方、自分の事業では、その結果に責任を持つ代わりに、自らの価値観をより反映させやすくなります。


では、気持ちよくお金を稼ぐとは、どういうことなのでしょうか。

その問いを突き詰めていくうちに、自分を含め、関わるすべての人の喜びが循環することが、私が求めている条件だと気づきました。

この思いは、合同会社ベリーの企業理念である「Support your joy」にも込められています。

利用者は代金を支払い、サービスを通じて喜びを得ます。その喜びがあるからこそ、私も嬉しい気持ちで代金を受け取れます。

さらに、利用者が喜びの声をレビューに書き、それを見た人が新たにサービスを利用します。

このような喜びの循環を実感できた好例が、民泊(旅館業)でした。


民泊で実感した喜びの循環


私たちは、「快適に過ごせる宿とはこういう形ではないか」と考えた宿泊施設を提供します。

利用者はその施設に興味を持ち、料金を支払って宿泊します。

そして、体験から得た喜びを発信します。私たちは「楽しんでもらえてよかった!」という気持ちとともに、お金を受け取ります。

その発信が、次の利用者へとつながっていくのです。

関わるすべての人が喜べる、こうした循環こそ、事業にとって最も大切なのだと気づきました。


家族へ広がる喜び


関わる人の中に家族が含まれていることも、大きなポイントです。

施設の掃除は、妻と母が中心となって担っています。

妻は保育士として働きながら、無理なく両立できる範囲でこの事業に携わっています。

保育士以外の収入があることは、妻にとって大きな安心につながっています。

一方、銀行や郵便局で働き、カルフールでは経理を担ってきた母は、年齢を重ねるにつれ、できる仕事が限られてきました。以前、「掃除くらいしかできなくなった」とつぶやいたことがあります。

しかし、母の丁寧な掃除は、宿の快適さを支え、多くの利用者の喜びと事業の収益を生み出す欠かせない力になっています。

子どもたちも掃除を手伝っています。また、利用者がいないときには、友達を招いてお泊まり会を開くこともできます。

子どもたちには、事業が収益を生み出す仕組みについても伝えています。

事業を始めるとはどういうことなのかを間近で見て体験できることは、子どもたちにとって貴重な学びになっていると思います。

このように、私だけでなく家族の喜びも循環する仕組みが、事業には大切だと考えています。


地域へ広がる喜び


さらに、利用者を通じて生まれる喜びは、これだけにとどまりません。

宿泊を伴う旅行には、買い物がつきものです。

買い物は宿泊施設の周辺で行われることも多く、地域経済の活性化につながります。ここにもまた、一つの喜びの循環が生まれます。

また、利用者が旅先での体験を発信すれば、その地域の観光名所だけでなく、まだ広く知られていない小さな場所にも光が当たる可能性があります。

それをきっかけに新たな人が訪れ、地域に生まれる喜びはさらに広がっていきます。

このように、事業に直接関わる人だけでなく、その周囲へも喜びが循環する仕組みをつくることが大切だと感じています。


事業の価値は収益だけでは測れない


民泊を通じて私が実感したのは、事業の価値は収益だけでは測れないということです。

利用者の喜びが家族へ伝わり、さらに地域へと広がっていきます。

また、子どもたちにとっては、事業がどのように価値を生み、収益につながっていくのかを間近で学ぶ機会にもなっています。

こうした喜びの循環を損なうことなく育てていくことが、事業を長く続けるための土台になると考えています。


喜びが循環する仕組みは、民泊だけに限りません。

私が取り組んでいる協生農法にも、同じような循環があります。

それについては、次の記事で紹介したいと思います。

一覧