こんにちは。 学習ジム・コーチの堀です。

連載ストーリーの第3話をお届けします。

テーマは「語彙力」。 特に、算数が得意な男の子がぶつかる 「情緒（じょうちょ）の壁」について。

「切ない＝心臓の病気？」 そんな会話に心当たりがある方は、 ぜひご覧ください。

第3話：「切ない」って、どこが痛いの？

【小説パート】

「はあ？ 意味わかんねー」

土曜日の午後。 リビングのソファで、 陸が課題図書を投げ出した。 バサッ、と無造作に置かれたその本は、 中学入試で頻出の「青春小説」だ。

陸にとっては、 深海生物の生態記録より難解なジャンルらしい。

「どうしたの？ ちゃんと読みなさいよ」

洗濯物を畳みながら麻衣が言うと、 陸は不満げに口を尖らせた。

「だってさ、この主人公、意味不明なんだよ。 なんで泣いてんの？ 好きな男が転校するだけでしょ？」

「……だけ、って」

「だって、二度と会えないわけじゃないし、 今はスマホあるじゃん。 LINEすればいいじゃん。 なんで『世界が終わった』みたいに泣くわけ？」

陸は本気で不思議がっていた。 彼の中では「転校＝距離の移動」でしかないのだ。

「あのねえ……。 スマホがあっても、隣にいないのが 寂しいのよ。それが『切ない』の」

「セツナイ？」

陸は眉間にシワを寄せる。

「なにそれ。 息が苦しいの？ お腹が痛いの？」

「違うわよ！ こう、胸がキュッとなる感じ！」

「心臓の病気じゃん。病院行けよ」

「違うってば！！」

麻衣は畳んでいたタオルを投げつけたくなった。 偏差値62の頭脳を持つ息子が、 「切ない」という言葉一つ理解できない。

（この子、語彙力がなさすぎる……。 全部、辞書通りの意味でしか受け取らない）

以前、「辞書を引きなさい」と言ったら、 彼は本当に引いた。 そこには『悲しく寂しい気持ち』とあった。

「ふーん。じゃあ『悲しい』でいいじゃん。 なんでわざわざ難しく言うんだよ」

そう言って、また図鑑の世界に戻っていった。

麻衣は絶望的な気持ちになる。 言葉の微妙なニュアンス、情緒、行間。 これらを教えるのは、 色盲の人に「赤」と「朱色」の違いを 説明するより難しい。

「これ覚えて！」と単語帳を作っても、 陸はきっと「切ない＝悲しい」と 記号のように暗記するだけだろう。 それでは、記述問題で通用しない。

どうすれば、この「理系脳」に 感情の彩りをインストールできるの？

【解説】語彙は「暗記」ではありません

「うちの子、語彙力がなくて……」 そう嘆く前に、 語彙を「暗記」させていませんか？

「切ない＝悲しい」と イコールで覚えても、応用は利きません。 記述で使えなければ意味がないのです。

言葉には温度と映像があります。

• 夕焼けの帰り道

• もうすぐ終わる夏休み

こうした「映像（イメージ）」とセットで 言葉をインプットするのが、 当塾のメソッドです。

丸暗記ではなく、 言葉の「世界観」ごとインストールする。 それが、記述力アップへの近道です。

【無料相談】言葉のイメージ力を鍛える

「情緒がない」と諦めるのは まだ早いです。

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