2025.02.14
「知っている」と「やっている」の間に「ある勘違い」の壁
成績アップへの近道探しという落とし穴
今日は、教育現場でよく目にする「勘違い」についてお話ししたいと思います。特に、多くの生徒が陥りがちな「練習せずに成績を上げる方法」を探し求める傾向について考えてみましょう。この「近道探し」は、実は遠回りになってしまうことが多いのです。
問題集渡り歩きの悪循環
私が塾講師として日々接する生徒たちの中で、最も頻繁に見かけるのが「効率的な学習法」を探し求める姿です。新しい参考書や問題集を見つけては「これこそが答えだ!」と飛びつき、数ページ取り組んでは飽きて投げ出し、また別の教材に移る...。この終わりのない循環から抜け出せない生徒が実に多いのです。
問題集一つをとっても、本当の効果を得るためには最低でも3回は繰り返し取り組む必要があります。1回目で概要を掴み、2回目で理解を深め、3回目で定着を図る。この基本的なプロセスを飛ばして、新しい教材に手を出すのは、まさに「勘違い」の典型と言えるでしょう。
国語をめぐる典型的な勘違い
特に印象的なのが、国語の成績に悩む生徒たちとの会話です。ほぼ毎回、こんなやり取りが繰り返されます:
「国語の成績がよくないみたいだけど、何か勉強してる?」 「何もやってないです...」 「どうして?」 「数学と英語をやらないといけないから...」 「でも、入試では数学で10点取るのも、国語で10点取るのも同じ価値だよ」 「でも、何をやっていいのかわからなくて...」
この会話の背景には、「国語は才能」という誤った固定観念が潜んでいます。確かに、数学や英語は解き方や公式を覚えれば点数に直結しやすい科目です。しかし、国語も同じように、適切な学習方法と継続的な取り組みがあれば、必ず成績は向上するのです。
現実の成績が物語るもの
そして入試直前になると、決まってこんな相談を受けます: 「先生、国語が全体の足を引っ張っています。どうしたらいいでしょう?」
実際の点数を見てみると: 国語:50点 数学:95点 英語:85点 理科:87点 社会:82点 合計:399点
「国語さえ良ければ400点を超えるのに...」と嘆く生徒。しかし、この状況に至るまでの間、具体的な対策を講じていなかったことが問題の本質です。「やり方がわからない」ことを理由に、行動を起こせないでいるのです。
シンプルだが確実な学習法
私自身の経験から言えることは、効果的な学習法は意外とシンプルだということです。中学時代、私は以下の3つを新しい単元に入るたびに欠かさず行っていました:
- 音読:文章の流れやリズムを体感する
- 漢字の読み書き確認:基礎的な理解力の向上
- わからない語句の意味調べ:語彙力の強化
これらは決して特別な方法ではありません。むしろ、誰もが知っている基本的な学習法です。しかし、重要なのは、これらを確実に実践し、継続することです。私の場合、中学時代の恩師からこの方法を教わり、3年間欠かさず続けました。その結果、国語の成績は常に安定していたのです。
実践が生む確かな成果
この方法の効果は、実際の指導現場でも実証されています。ある小学6年生の保護者から、印象的なフィードバックをいただきました:
進研ゼミやZ会など、大量の学習教材をこなしていても成績が伸び悩んでいた生徒が、これらの基本的な方法を実践することで、驚くべき変化を遂げました。2学期末には成績表が「A」評価で埋め尽くされたのです。
「毎日の授業を丁寧に振り返り、音読し、ノートに書いたものを別のノートにもう一度書く」という地道な作業。音楽や体育でさえ、同じ方法で復習を行ったそうです。確かに、この取り組みは決して楽なものではありません。親子ともに、日々の努力が求められます。しかし、その努力は確実に結果として現れたのです。
知識と実践の架け橋を作る
重要なのは、「知っている」ことと「やっている」ことの違いを認識することです。同じ学習法を紹介しても、実践する人としない人では、当然結果も大きく異なってきます。効果的な勉強法は、実は私たちの目の前にあるのかもしれません。
全ての方法を一度に実践する必要はありません。どれか一つでも、確実に実行することから始めれば良いのです。それが、着実な成績向上への第一歩となります。
着実な一歩から始める成績アップ
真の「近道」は、基本に立ち返り、地道な努力を積み重ねることにあります。特に国語のような積み重ねが重要な科目では、継続的な取り組みなしには成果は望めません。
一度に全てを完璧にこなす必要はありません。まずは自分にできそうなことから、少しずつでも確実に実践していくことが、確実な成績アップへの第一歩となるのです。そして、その小さな一歩の積み重ねが、やがて大きな成果となって実を結ぶはずです。
「知っている」だけで満足せず、「やっている」状態に移行できるかどうか。それが、成績向上の鍵を握っているのです。