2025.02.08
「2つの処方箋で変わる親子関係 - 共感と成長のバランス術」
はじめに
子育ての悩みは誰にでもあります。うまくいかないことがあるのは当たり前で、それは「やり方」の問題であって、子ども自身の問題ではありません。今回は、親子関係を改善する「2つの処方箋」についてお話しします。
2つの処方箋とは
人間関係を良好にし、成長を促す2つの処方箋があります。それは「痛み止め」と「治療薬」です。この2つを適切に使い分けることが、良好な親子関係を築くコツなのです。
第一の処方箋:痛み止め(共感)
痛み止めとは「共感」のことです。「そうだね」「わかるよ」と相手の気持ちを理解しようとする姿勢です。ただし、共感だけでは子どもは成長しません。それは一時的な痛みの緩和に過ぎないのです。
第二の処方箋:治療薬(改善点の指摘)
治療薬は、相手の改善点を指摘することです。これは成長を促すために必要ですが、耳が痛い内容になることもあります。多くの親は、この治療薬ばかりを使う傾向にあります。
重要なのは使用順序
ポイントは、これらの処方箋の使用順序です。最初に痛み止め(共感)を使い、その後に治療薬(改善点の指摘)を使うことが重要です。
実例:子どもの気持ちを理解する
筆者の経験を例に挙げると、子どもの頃、いじめられた後に親切な人の申し出を断って歩いて帰った際、親から叱られました。この時に欲しかったのは、まず「嫌な思いをしたね」という共感でした。その後で「でも、暴力はダメだよ」という指導が来れば、素直に受け入れられたはずです。
なぜ順序が大切なのか
理解されていると感じている人の意見は聞き入れやすいものです。反対に、理解されていないと感じる相手の意見は、たとえ正しくても受け入れられにくくなります。
カルト問題から学ぶ理解の重要性
興味深い例として、優秀な学生がカルト集団に入ってしまうケースがあります。その多くは、周囲から十分な理解を得られていないと感じている場合が多く、カルト集団が「理解してくれる」と感じさせることで引き込まれていくのです。
運動部の例に見る信頼関係
ある全国レベルの陸上部では、厳しい練習にも関わらず生徒たちは前向きに取り組んでいました。その理由は「監督が分かってくれている」という信頼関係があったからです。一方、監督との関係が築けない野球部では、多くの生徒が退部してしまうという対照的な例もありました。
まとめ:バランスの取れたアプローチを
親は子どもの「できていないところ」に目が行きがちで、つい治療薬(指導)ばかりを使ってしまいます。しかし、まずは痛み止め(共感)を使い、その後で治療薬を使うという順序を意識することが大切です。全てのケースでこれを完璧に実践する必要はありません。10回のうち1回でもこの順序を意識して対応するだけでも、親子関係は大きく改善される可能性があります。
歯医者での治療と同じように、まずは痛みを和らげてから、将来に向けた改善策を提案する。この順序を守ることで、より効果的なコミュニケーションが可能になるのです。