2024.12.15
眼科学通信(2)私の学術論文 part 4
正常者のデータが揃ったところでさまざまな疾病について検討することができた。多数の患者でインフォームドコンセントもなしに実行したのであるが、今では考えられないことである。
こうして、スタートして四年から五年後に「ヒトの視覚誘発電位の研究」というメインタイトルで三篇の論文を日本眼科学会雑誌に公表することができた(2,3,4)。また、私の最初の英語論文がJapanese Journal of Opthalmologyに掲載された(5)。まもなく、ミシガン州のAlpern先生の招きで昭和46年7月から2年間の予定で留学することになった。渡米の2か月前、指導教官の鹿野信一教授から学位申請の準備をするように言われてびっくりするとともに、下記の「論文内容要旨」を慌てて作った(昭和46年5月頃作成、保存資料を32年後の鹿児島大学定年退職に際して見つけてワープロしたもの)。教授は2年後の帰国予定の半年前に体感されることになっていたわけで、鹿野先生の温情あふれるご配慮に感謝したものである。大学紛争の余塵が残る時に学位審査を受け、家族を連れて渡米して数か月後、学位記が名古屋の父のもとに送られてきたのであった。
(1) 大庭紀雄 私の修業時代。Practical Ophthalmology 56: 126-128, 2000
(2) 大庭紀雄 ヒトの視覚誘発電位の研究。第一報 網膜局所刺激による視覚誘発電位について。日本眼科學會雜誌七十一巻、昭和42年
(3) 大庭紀雄 ヒトの視覚誘発電位の研究。第二報 パターン図形提示による視覚誘発電位について。日本眼科學會雜誌七十二巻、昭和43年
(4) 大庭紀雄 ヒトの視覚誘発電位の研究。第三報 杆体系要素の関与について。日本眼科學會雜誌七十三巻、昭和44年
(5) Ohba N: Visual of evoked potential in man by localized retinal stimulation. Japanese Journal of Ophthalmology 11: 221-226, 1967
出典:「落穂のバスケット』大庭紀雄(2002)